古川巧 art diary

よい作品とは、何度見ても飽きないもの!

菩薩立像 鎌倉時代

日本美術史 彫刻編

数ある日本美術を少しずつ紹介していきます。

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木造,金泥塗り・彩色・切金,玉眼

像高106.3Cm 重文

制作年は鎌倉時代13世紀前半の作品です。

鎌倉時代には木彫の一部や装飾に異なった材質を用いる例が増えました。目に水晶をはめる玉眼はその代表的な例ですが,本像は上下の唇にも彩色の上に薄い水晶板をあてる,玉唇とでもいうべき技法を用いています。仏師善円(1197-1258)の作風に通ずるものがあります。
宝冠の正面の窓からのぞいていたはずの標幟(ひょうじ)を欠くので尊名が明らかにならず、伝来も不明ですが、作風が鎌倉時代に南都(なんと)諸寺院の造像に携わった仏師善円(ぜんえん)に似て、玉眼(ぎょくがん)をおさえる方法も善円作奈良国立博物館十一面観音菩薩立像と共通しています。また、宝冠の意匠が興福寺本坊持仏堂(こうふくじほんぽうじぶつどう)弥勒菩薩立像のそれに酷似することからも、奈良周辺で造られたものとみてまず間違いないらしい。奈良にはよく似た形式の像が、いずれも弥勒菩薩として伝来しており、この像も鎌倉時代に南都で流行した弥勒信仰の遺品と考えられます。



現在、東京国立博物館所蔵!