古川巧 art diary

よい作品とは、何度見ても飽きないもの!

ギャラリー睦コレクション展「江屹」 ステップスギャラリー

今、ステップスギャラリーは ギャラリー睦コレクション展「江屹」を開催中。
ステップスギャラリーで毎年恒例となってきたギャラリー睦コレクション展。
本年は江屹(ジャン・イー)一人を取りあげ、さながら個展の様相を呈した。

しかし作品は全て睦のコレクションであり、しかも 20 年前の作品とは思えないクオリティを保っている。現代美術の真髄は時空の超克にあることを知らしめる。

ジャン・イーは 1958 年、中国湖北省生まれ。84 年来日90 年千葉大学工学学術博士号取得、93 年東京芸術大学・絹谷幸二研究室に一年所属、個展多数。


中国の伝統的な水墨の世界と、アメリカ、ヨーロッパを亘
り歩いた現代美術の発想を、意図的に使い分けながらも時
にそれらは目に見えない形で混在している。
ミクストメディアを用いた現代美術の作品は、撓み、削ら
れ、文字が刻み込まれながらも、あらゆる風化に対抗し、
その時の己の姿を確固たる自信を保持して佇んでいる。
水墨や水彩、インクを使用している場合には水の流動のス
ピード感に溢れ、アンフォルメルアメリカ抽象表現主義
が持つ「痕跡」を一切残さず、描いた瞬時を留めている。
ジャンを器用貧乏だとか、風見鶏と非難する者もいよう。
しかしジャンの制作で重要なことは、手法を使い分けるの
ではなく、入れ替えと混在を意図的ではなく恣意的に行っ
ているところにある。ジャン自身も気が付いていない。
ジャンの方法論は、今度何十年も続く制作と、その結果だ
けでは計り知れないものがある。作品の真価はその瞬間に、
そこに立ち会った者が行うべきなのだ。
例えばジャンの作品にアジアの動向から視線を向けよう。
今日、アジアの現代作品はマーケットの為に制作され、英
語による研究がナショナリズムと資本主義を支える。
高ければ価値があることを信条としている一連の作品群
と、ジャンの現代美術にどれだけの差が生まれているか、
それを比較するには時間がかかる。
それならジャンは何故日本にいるのかを考えてみよう。ジ
ャンは日本の、特に近代の油彩に目を注いでいる。中国、
韓国、台湾、インドネシアで実現されなかった世界。
そのバックグラウンドにある政治的思想と辿った道を解
き明かさなければ、我々もジャンもアジアのアーティスト
も米国、欧羅巴を含めた同時代性を見出すことが出来ない。
このような膨大な課題を踏まえるのが、現代美術なのでは
ないだろうか。ジャンの作品が際立つのは、展示方法にも
由縁する。キャンバスに油彩、紙に水彩、インク、水墨、
ミクストメディアと異なる技法の作品が、決して重なるこ
となく展示されている。それによってジャンの作品同士が
位相を放ち続ける。作品同士が作者の手を離れて語り合う。
それはコレクターの人生の慧眼でもある。ステップスギャラリーのHPより。


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